メール認証・なりすまし対策

DMARC p=noneからrejectへ移行する前に確認すること

DMARCをp=noneのまま放置していませんか。quarantine・rejectへ強める前に、送信元の洗い出し、集計レポートの読み方、転送やメーリングリストの影響、段階の進め方を確認します。

「DMARCは入れました。p=noneです」——このまま何年もたっている会社は少なくありません。p=noneは受信側に「何もしなくてよい」と伝える設定で、会社名をかたる偽メールは今までどおり届きます。一方で、準備なしにrejectへ上げると、請求書や予約確認など自社の正規のメールまで届かなくなるおそれがあります。強める前にやることは、正規の送信元をすべて合格させることです。

3つの段階で何が変わるか

ポリシー不合格のメールの扱い(受信側への依頼)位置づけ
p=none何もしない。レポートだけ送る監視。現状把握の期間
p=quarantine迷惑メールフォルダなどに隔離試運転。届かない事故の影響が比較的小さい
p=reject受け取らない完成形。偽メールを受信側で止める

DMARCで「合格」になるのは、次のどちらかを満たすメールです。

  • SPFに合格し、そのドメインが差出人(From)のドメインと一致している
  • DKIMの署名が有効で、署名したドメイン(d=)がFromのドメインと一致している

ここでいう「一致」をアライメントと呼びます。初期設定(relaxed)では、mail.example.jp と example.jp のように組織のドメインが同じなら一致とみなされます。SPFもDKIMも「合格はしているが、配信サービスのドメインで合格している」状態だと、DMARCは不合格です。p=noneの間は表に出ませんが、rejectにした瞬間に届かなくなるのはこのパターンです。

移行前のチェックリスト

1. 自社ドメインで送っているものを全部書き出す

社内のメールソフトだけではありません。見落としやすいのは次のようなものです。

  • Webサイトの問い合わせフォームの自動返信・通知
  • 請求書・見積書の送付システム、会計ソフト
  • 予約システム、ネットショップの注文確認
  • メールマガジンなどの配信サービス
  • 複合機のスキャン送信、監視システムのアラート
  • 採用管理システム、サポート窓口のツール

各部署に「自社のアドレスで、お客様や取引先にメールが自動送信される仕組みはあるか」を聞くのが確実です。

2. 集計レポート(rua)を受け取り、読む

rua=mailto:[email protected] のように送り先を指定すると、Gmailなど主要な受信側から、どのIPアドレスが自社ドメインを名乗って何通送り、SPF・DKIMの結果がどうだったかが、1日単位のXMLファイルで届きます。XMLをそのまま読むのは大変なので、レポートを集計・表示するサービスやツールを使うのが一般的です。

確認するのは次の点です。

  • 送信元ごとに、DMARCに合格しているか
  • 不合格の送信元が、正規のサービスか、身に覚えのないものか
  • 身に覚えのない送信元が大量にあれば、すでに名前を使われている可能性がある

期間の目安は2〜4週間です。月末だけ送る請求書のように頻度の低い送信元があるなら、1か月以上見てください。

3. 不合格の正規送信元を直す

  • DKIMを独自ドメインで署名する:多くの配信サービスは管理画面で独自ドメインの署名を設定でき、指定されたレコードをDNSに追加します。SPFより転送に強いため、こちらを優先します
  • SPFに含める:サービスが指定する include を追加します。ただし参照回数は10回までです(SPFのDNS lookup 10回制限を超えたときの整理方法)
  • 送信をやめる・ドメインを分ける:古い複合機や使っていないツールは止めます。大量配信は news.example.jp のようなサブドメインに分ける方法もあります

4. 転送とメーリングリストの影響を知っておく

メールが転送されると、送信元のサーバーが変わるためSPFは不合格になりがちです。メーリングリストが件名や本文を書き換えると、DKIMの署名も壊れることがあります。受信側の多くはこうした事情を考慮した仕組み(ARCなど)を使っていますが、DKIMを独自ドメインで署名しておくことが、転送に対するいちばんの備えです。

5. 段階を決めて上げる

  1. p=none; rua=...(2〜4週間以上)
  2. p=quarantine; pct=25 など一部から(RFC 7489の pct で適用率を指定)
  3. p=quarantine(適用率100%)
  4. p=reject

各段階で1〜2週間レポートを見て、不合格の正規送信元が出ていないことを確かめてから次へ進みます。サブドメインの扱い(sp=)も忘れずに決めます。未指定なら親のポリシーが引き継がれますが、使っていないサブドメインを名乗られないよう sp=reject を明示する方法もあります。

よくある誤解

  • 「p=noneでも偽メールは減る」:減りません。受信側は独自の判断で迷惑メールにすることはありますが、それはDMARCの指示によるものではありません
  • 「rejectにすれば偽メールは一切届かない」:DMARCが止めるのは、Fromに自社ドメインそのものを使ったメールです。examp1e.jp のような似たドメインや、表示名だけを社名にしたメールは止められません(自社ドメインがなりすましメールに使われる仕組み)
  • 「pct=100は書かないといけない」:pct を省略すると100%として扱われます

Webサイト診断の診断ではこう判定します

なりすましメール対策診断の「DMARCのポリシーの強さ」は15点満点で、p=reject が15点、p=quarantine が10点、p=none(監視のみ)は3点です。DMARCそのものが無い場合は、全体の点数の上限を50点にしています。あわせて次も確認します。

  • 適用率(pct):100または未指定で3点、100未満は1点
  • 集計レポートの送付先(rua):指定ありで4点
  • サブドメインの扱い(sp):sp=reject か quarantine で3点。sp未指定でpがquarantine以上なら2点、sp=none やpがnoneのまま未指定なら0点

DNSの公開情報だけで判定するため、レポートの中身や実際の届き方は見ていません。そこは運用で確認する部分です。

制作会社・保守会社への依頼文の例

件名:DMARCポリシーの段階的な強化のご相談

当社ドメイン(example.jp)のDMARCは現在 p=none です。
偽メール対策として、quarantine、reject へ段階的に強めたいと考えています。

1. 集計レポート(rua)の受信と、送信元ごとの合否の集計
2. 不合格になっている正規の送信元の特定と、DKIM・SPFの修正
3. 段階の計画(各段階の期間、切り戻しの手順と連絡先)
4. sp(サブドメイン)の扱いのご提案

当社で把握している送信サービスは次のとおりです:
(例:社内メール、問い合わせフォーム、請求書システム、メール配信サービス)

現状を確認してから計画を立てる

まずは今のポリシー、適用率、レポートの送付先、サブドメインの扱いを確認してください。分からない場合は無料のご相談で一緒に確認します。レポートの読み込みから reject までの段階導入を任せたい場合はDMARC段階導入・監視、SPF・DKIMの設定からまとめて直したい場合はなりすましメール対策 設定代行をご覧ください。3つの設定の役割はSPF・DKIM・DMARCの違いを1枚で理解する、

よくある質問

p=noneのままでも、Gmailの送信者要件は満たせますか?

2026年10月時点のGoogleのガイドラインでは、大量送信者に求めるDMARCのポリシーはnoneでもよいとされています。ただし、要件を満たすことと偽メールを止めることは別の話です。偽メールを受信側に止めてもらうにはquarantine以上が必要です。最新の要件は公式のガイドラインで確認してください。

rejectにした後で、正規のメールが届かなくなったらどうすればよいですか?

いったんquarantineかnoneに戻し、集計レポートでどの送信元が不合格になっているかを確認します。DNSの変更は反映に時間がかかることがあるため、戻す手順と担当者を事前に決めておくと安心です。

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参照資料

  1. RFC 7489 Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance (DMARC)(2026.10.01 確認)
  2. Google Workspace 管理者ヘルプ:メール送信者のガイドライン(2026.10.01 確認)
  3. Yahoo Sender Hub:Best Practices(2026.10.01 確認)
  4. dmarc.org(2026.10.01 確認)